コラム「一休さんと一休み」
私達が告別式の時に一番気にするのは時間です。 告別式の後に火葬場に行かなければならないからです。(東京の場合です。)そして、火葬場では棺が到着する時間が決められています。もし、その時間に遅れることがあれば、次にその火葬炉に収まる方に迷惑がかかってしまいます。それが極端に遅れることになれば、その火葬時間には火葬できず、だいぶあとの火葬まで待たされるかもしれません。また、東京の民営火葬場には段階があるので、例えば一番上等の火葬炉に収まるはずが、一番下等の火葬炉に下がってしまうことになるかもしれません。そんなことになれば大変です。ご葬家から大変なクレームをいただくことになるでしょう。クレームだけではすまないかもしれません。
出棺が遅れる原因は、いくつかあります。
1.お寺様のお経が長くて遅れてしまう。
2.出棺前の挨拶が長くて遅れてしまう。
3.会葬者が多く、焼香が時間内に終わらない。
などです。私達はそれらのことを、ある程度予測して、事前に十分な打ち合わせをしたり、様々なことをして出棺時間を遅れないように努力します。しかし、それでも葬儀では予測できないことがよくあります。
少し前の話ですが、ある葬儀の告別式での事です。その告別式には予想以上にたくさんの会葬者がこられ、私は時間以内に会葬者の焼香が終えられるか心配で、いらだっていました。何とか努力して時間以内に、会葬者の焼香が終わりました。時間いっぱいです。これから、霊柩車にお棺をお納めして、挨拶です。ところが、霊柩車が所定の場所にありません。私はあわてて、近くにいる社員に声を荒げてききました。「霊柩車は!」と。するとビックリしたその社員は、あわてて「そば屋 ん!」というのです。冗談じゃありません。私は「こんな時に食事なんかして、何を考えてるんだ! 早く呼んで来い!」とさらに興奮した大きな声で社員に怒鳴りました。すると、うしろから「社長ここです。」と声がしました。うしろを振り返り見ると、その式場の前にはもうすでに霊柩車が到着していました。霊柩車の運転士さんは出棺時間が遅れそうだということに気を利かして、すでに一番良い場所に霊柩車を着けていたのです。ほっとしてその霊柩車の運転士さんに合図をしました。落ち着いてその運転士さんを見ると、その人は「そばた」さんでした。あだ名は「そばやん」です。
人間あわててはいけません。