コラム「一休さんと一休み」
火葬場での支払いや、案内をすることを「宰領」(さいりょう)と言います。「宰領」を辞書で引くと「とりしまること。またはその人。」と載っています。最近では、女性の社員の方が宰領をしている葬儀社がたくさんあります。会葬者達を案内するのに男性より女性の方があたりがやさしくいいものです。しかし、私の父のような一昔前の葬儀屋さん達に言わせると、それはそれまででは考えられないことであり、少し不快なようです。私自身はまったくこだわりはありません。
「宰領は葬儀屋の主人が行かなくちゃいけなかった。」私の父はよくそう言います。ある時理由を何気なく聞いてみました。昔、おじいさんの時は、この火葬場に行くときに、宰領をするおじいさんが葬列の先頭に立ち、リヤカーに葬儀に供えられたお盛り物をたくさん積んで行ったそうです。そして、その途中には物乞いがたくさんいて、その人達が火葬場までの道を妨害?するらしいのです。先頭に立つ宰領のおじいさんはその人達にリヤカーに積んだお盛り物を少しづつ分け与えて、前に進めるように話をつけていったそうです。そして、話のうまくいった葬列は、早く火葬場につけることができ、そうではない葬列は後回しになってしまったそうです。その良し悪しは、それこそ葬儀屋の腕だったそうです。そして、その仕事は何よりも葬儀屋の主人がやらなければならなかったそうです。
私はその話にはビックリしました。なぜならばその話はそんなに昔の話ではないからです。昭和初期ぐらいでしょう。(やっぱりだいぶ昔か)でも今はそんなものはまったくありません。微塵もありません。私の父はただ、葬儀屋の主人たちが来ないと、火葬場での話相手がいなくてさみしいからそんなこといっているんじゃないかな。