コラム「一休さんと一休み」
火葬場では深い悲しみのため、大変デリケートな精神状態の方がたくさんいらっしゃいます。中には、放心状態になって立ちつくしていたり、泣いて棺から離れない方などもいます。その方々を相手に、不快感を与えないようにしてお勤めする、火葬場の仕事は大変な仕事です。そして、そのような方々とよく接してらっしゃるためか、火葬場の職員の人たちは、人間的に非常にやさしい方が多くいらっしゃいます。
あるご葬儀の御骨上げの時の事です。お身内のなかに幼稚園に通うぐらいの女のお子さんがいらっしゃいました。その子が、御骨上げを担当する年配の火葬場の職員にこう問い掛けたのです。
「おじさん。これ人間の骨でしょ?おじさん、怖くないの?」
私もふくめてそこにいた人たち全員ビックリして、その場に緊張感が漂いました。そして少しの間、動きが止まりました。しかし、その職員は、何事もないように、その子にやさしい笑みを見せてこう言ったのです。
「ううん全然おじさんは怖くないよ。お骨はなんにもしないからね。それにこのお骨は、おじょうちゃんの大好きなおじいちゃんのお骨でしょ。だったら、全然こわくないじゃない。 おじさんが怖いのはね。おじさんの奥さんだけだよ。」
その一言でその場の緊張がとれ、みなやさしい気持ちで御骨上げを行いました。そして御骨上げが終わったあと、お身内一同その職員に「ありがとうございました。」と深く頭をさげて、火葬場をあとにしました。