コラム「一休さんと一休み」
前回のコラムでも書きましたが、葬儀はとても忙しいものです。そのために、いろいろな間違いがあることがあります。お身内は精神的にもつらいなかで、準備をするわけですから、当然、忘れてしまったり、間違ってしまったりすることは、多少はしかたがないことだと思います。私たち葬儀屋が失敗するのは、もってのほかですが、身内が失敗するのを未然に防ぐように、細心の注意をはらうのも葬儀屋の仕事です。
(葬儀には葬儀屋が行うことのほかに、お身内でしていただかなければならないことがたくさんあります。葬儀はすべてケースバイケースです。私たちが気づいた必要な事柄らはご説明いたします。)
私が以前、施行した葬儀でこんなことがありました。
お身内が通夜の時に、お寺に迎えにいくことを忘れてしまったのです。(私の確認不足でもあります。)それに気づいたのは、開式三十分前でした。もうお寺に、迎えに行く時間はありません。そこで、お寺に電話をいれました。すると、もう住職はタクシーでそちらにむかったとのことです。そして住職は開式二十分前に式場に到着しました。お身内は、住職にあやまりました。すると住職は「いや、こちらこそ申し訳ありません。忙しいのに、迎えの車など頼んでしまって、どうぞ気になさらないでください。」と逆にあやまられるのです。わたしは、誰のせいにもされず、ましてや自分のせいにされた住職の態度に非常に感動いたしました。そして、それでもしきりにあやまるお身内にたいして、「みなさん、「逆さがけ」のもう一つの意味を知っていますか。あれは、普段することの逆をやってしまうほど、私たちは動揺しています。ですから、多少のご無礼をお許しください。という意味があるんですよ。ですからもう十分ですよ。」と付け加えられたのです。 私は、この住職に真の宗教者を見た気がしました。
(逆さがけ=着物などを上下逆に故人の寝てる上に掛けること)