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 コラム「一休さんと一休み」

14. 「お通夜のお線香番」

最近の葬儀式場では消防法の関係上、お通夜の時泊れない場合がほとんどです。 しかし、私はお泊りされることも意味があると思っております。

 少し前でしたがこんなことがありました。ある会社の社長のお父さんの葬儀でした。その社長はとても厳しい方で、ご相談の際も葬儀中もいつも厳しい顔をされて、手伝いをされる会社の社員に対してもしっかりと厳しく指示を出されていました。お通夜には予想以上の会葬者がお見えになりましたが、社員の方々はひとつも慌てることなく整然として葬儀を手伝われました。そのかいもあってなんのトラブルもなくお通夜を終えました。

 お通夜の後、社長は社員をねぎらうため、お清めの席で夜遅くまで飲まれていました。(金子会館では終わる時間は決まっておりません。何方かがいらっしゃるまで席をお出しいたします。)夜10時過ぎたあたりで手伝いの方々は席をたたれ「もう社長、十分です。ありがとうございました。」と誰もが千鳥足になるほど酔っ払っていました。
「まだいいじゃないか。本当に今日は世話になった。お前達がいれば、会社は大丈夫だと私は思ったよ。ありがとう。」
「社長。気持ちはわかりました。ありがとうございます。でももう遅いですし、社長も明日がありますから早く休んでください。体に障ります。」
「わかった。じゃぁ気をつけて帰りなさい。本当にありがとう。でも、私はこれから仏様のお線香番をしなければならないんだ。今日は徹夜するんだよ。」
「そんなこと社長、息子さん達にしてもらったらいいじゃないですか?」
「いや、何を言っているんだ。それは私の仕事だ。息子達もさっきそんなことを言ったが、私は怒って帰したんだ。」
と、いつもの厳しい顔に戻ってしまいました。
その厳しい顔を見た社員達は、今までの和やかな雰囲気が一変し、みな静かに席を後にしました。

「金子さん。悪かったね遅くまで…。席は片付けてもらっていいですよ。それと悪いけど布団を準備してください。」
「はいわかりました。」私は祭壇の前に布団を準備しにいきました。しかし、布団は一組しかありません。
「社長。布団は一組しかお取りにならなかったんですか?」
「うん。今日はこれから私ひとりでお線香番をするから、一組でいいんだ。」
「そんなぁ、お疲れになりますから、ご自宅も近いですし、交代でお休みになった方がよろしいですよ。」
「心配してもらってすいません。でもね、私はこれがやりたかったんですよ。」
「えっ」
「親父と誰にも邪魔されずに、飲みたかったんですよ。本当は生きている間にしたかったが、お互い変なカッコつけてできなかった。だからせめて火葬される前に向き合いたいと思ってね。すいません。少し酔いましたかね。」
「そうですか。じゃぁ祭壇にお酒をお上げしないといけませんね。何がお好きでしたか?」
「そう思って、ブランデーもってきたんですよ。金子さん申し訳ないがこれで水割りを作ってくれませんか。」
「わかりました」
私は社長からあずかったブランデーで水割りを作り、遺影の前にそっとお上げしました。

 次の日の朝、眠そうな顔で社長が祭壇の前に座っていました。
「社長、もう息子さん達がいらっしゃいましたから代わってください。まだ告別式まで4時間ぐらいありますから、少し休んでください。」
「ありがとう。 いやぁーいい二日酔いですよ。ははは。」
社長の顔はいつもの厳しい顔が想像つかないぐらい、やさしい顔をしていました。

 確かにお通夜のお線香番は大変です。しかし故人と本当に向き合える時間はその時間が一番じゃないかと思います。葬儀の最中ではなかなか忙しくてそんな時間を作れません。何人かで、ずっと故人のお話をしていてもいいし、お酒を飲みながらでもいい、すごし方はみなそれぞれです。ただ、故人を思い、故人と語り、故人との物語を作っていただきたい。お線香の火を気にするだけで、出来ないことが出来るのがお通夜の番かもしれません。きっとその中で心が癒されることが多くあるでしょう。


金子直裕
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